端正な横顔を見つめる。

すっと通った鼻筋。
黒くてキラキラした輝きを持つ瞳。
少し薄いけれどいつも柔らかく口付けをくれる唇。

それを辿る様に一つずつ見る。

のだめの視線に気づいているのかいないのか真一君はじっとさっきから総譜に視線を落としている。
まぁたぶん、絶対に気づいていると思いマスケド。

付き合い始めの頃はのだめの事なんてどーでもいいから気づいてくれないなんて拗ねたりしたけれど、実は気になんてしていないフリをしながら真一君は結構のだめの事を気にかけてくれている事を今はよく知ってる。
総譜に心奪われながらもほんの少しだけのだめを想ってくれている。

それは顔がニヤけてしまうほど幸せな事。

何年も粘ったかいありましたよ。

そっと笑いを洩らすと総譜の上を彷徨っていた手がスッとのだめに伸ばされた。
大きな骨ばった手はゆっくりとのだめの手を取ってくれる。

「真一君?」
「ん?」
「どうしたんデスカ?」
「別に。もうちょっとだから大人しくしてろよ。」
「はーい。」

くふくふと笑うと変な声で笑うなと小さく叱られた。
でも手はゆっくりと優しくのだめの手の甲を撫でてくれる。

言葉と行動が正反対。

それにまた小さく笑った。

かっこよくて。
俺様で。 
音楽が大好きで。
いじっぱりで。
努力家で。
ちょっと意地悪で。
家事がプロ並みで。
ムッツリで。

そしてとっても優しい。

こんな真一君をどれだけの人が知っているんだろう?

彼の一面を知っている人はたくさんいる。
だけどいろんな彼を知っている人はそんなにいない。

のだめはその中で何番目くらいに真一君を知っているんでしょう?

出来るなら一番!
と言いたいけれど、きっとまだまだ。

でもきっと何年後かには胸を張って一番デスって言い切れるように頑張りマス。
心の中で拳を作ってみる。

だってこの世で真一君を一番愛してるって言い切れマス。
だからきっとこの世で一番の真一君フリークにもなりマス。

「覚悟しておいて下サイネ。」

小さく呟いた声に真一君が顔を上げる。
そして初めてのだめを見つめてくれた。

「なに?」
「なにもー。大好きデスって言ったんデス!」
「なんだそれ?」
「ふふふー。あ、お勉強は?」
「お前が煩いから終わり。」
そのまま真一君は総譜を閉じるとテーブルの上にそれを置いた。

それにのだめはにんまりと笑う。

「じゃあ、のだめとお話しましょー!」
「何を?」
不思議そうな真一君の頬に口付ける。
それにちょっとびっくりした顔の真一君を上目遣いに見上げた。

「のだめと愛について。」

そう言ってにっこり笑うとバーカって言われてそのまま腕を引かれた。

とりあえず人生の必須科目をきっちり教えてクダサイネ。

 

end